ネックを持つ位置

4月、5月は出会いの季節。講習会などで中学・高校に伺うと、初めて楽器を手にしたという人にもたくさん出逢います。

また、音楽大学でも、アルト以外のサックスの演奏を初めて本格的に取り組む学生もたくさんいます。

そんな中でよく目にする、危ない取り扱いと楽器の不調について、ネックに焦点を当てて書きたいと思います。初めてのサックスや普段使わない楽器を使う時、ぜひ気をつけて欲しいと思います。

サックスのネックは、意外と長いです。テナーサックスだと30cm近い長さがあります。そのため楽器本体にネックを差し込む・取り外す時や、ネックにマウスピースを抜き差しする時に、ネックを持つ場所・手を添える場所によっては、いわゆる「てこの原理」でネックが曲がることが結構よくあるのです。

例えば、楽器本体にネックを差し込む時の写真です。1枚目が悪い例。2枚目が良い例

ネックのマウスピース側をだけを持って本体とネックを抜き差しすると、ネックと本体の接合部分が引っ掛かってしまった時に、てこの原理でネックの曲がっているところ(作用点)に強い力がかかってしまいます。必ず、ネックの本体側、楽器本体の真上あたりを持ってネックの抜き差しは行いましょう。

マウスピースを抜き差しする時も、ネックが曲がるリスクがあります。

マウスピースを持っていないもう片方の手を、ネックに添えて、ネックにかかる力からネックを支えてあげましょう。また、マウスピースがスムーズに入るように、ネックコルクにグリスをきちんと塗ってあげることも大切です。

サクソフォンのネックはとても音に影響します。万が一曲がってしまうと、吹きやすさや音色・音程にも影響が出てきます。さらに一度曲がってしまうと金属が柔らかくなってしまうため、直しても再び曲がってしまいやすくなります。加えて、アルト・テナーサックスのネックにはオクターブキーのトーンホールを開け閉めするレバーがついています。ネックが曲がると、このレバーも常に上がった状態になってしまい、オクターブキーを押さない音域の音が出にくくなることがあります。

この写真の丸で囲んだジョイント部分。ここはオクターブキーを押していない時に、本体のバーとネックのバーの間でほんの少し、1mm弱の隙間があることが必要です。もしもピッタリくっついていたら、ネックやオクターブキーのレバーが曲がっていて、ネックのオクターブキーがわずかに開いてしまっている(浮いている)可能性があります。

中学・高校の吹奏楽の講習会で、特にテナーサックスの生徒から「オクターブキーを押さない音がうまく出ない」という質問・相談をもらうことが結構あります。その場合、このオクターブキーのジョイントが原因(=ネックの扱いが悪く、ネックが曲がっているのが原因)のことがほとんどです。

ちなみにこういう楽器の事故は、決して初心者や中高生だけのものではありません。実は音楽大学の備品のテナーサックスも、かなりの数のネックが曲がっていることがあります。私の母校の音大には、私の在学中、テナーサックスとバリトンサックスが各20本ほどずつ備品としてありましたが、その半分近くのネックが、曲がったり歪んだりしていました。それほど、サックスのネックはデリケートなものなのです!

もちろん、この「てこの原理」でネックを曲げてしまう以外にも、ネックをどこかにぶつけて凹ませる、なんてことも起こります(私が以前使っていたバリトンサックスのネックにも、いつついたか分からないエクボがあります…)。
楽器に影響が大きいのに、意外と乱雑に扱われがちなサックスのネック。ぜひ、自分は大丈夫と思っている人も含め、楽器を組み立てる時・片付ける時に、ネックの正しい位置を持っているか、変な力が加わっていないか、確認してみましょう。

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